せたな町の藻岩の滝。それは海沿いの追分ソーランラインの道沿いに流れる、こじんまりとしながらも優雅な印象のある滝。人工的な構造物が含まれてしまってはいるけれど、滝を流れる水が描き出す白流線が美しく見えてくる静かな滝。
隣接する島牧村からせたな町へと南下するならば、藻岩トンネルに続く須磨トンネルを抜けたところに流れている藻岩の滝。せたな町から島牧村に向かうとすれば、横滝トンネルを抜けて、須磨トンネルに差し掛かる直前に山側に見えている静かな滝。
藻岩トンネルのそばに藻岩の滝が流れていそうだけれども、須築トンネルの傍というのも、ちょっと紛らわしい。藻岩岬を須築トンネルが通っているから、また紛らわしい。
水量は季節によって大きく違っているようで、すくない時はわびしさを感じるほどの見ごたえ感皆無な滝になってしまうようだけれども。それなりの水量があれば、幾重にも重なる水流の残像が視覚に焼きつくような、優しく滑り落ちる滝。
落差20mほどのその滝は、滝そのものは自然の岩の間を滑り落ちてはいるけれど、滝つぼから流れ出る川の護岸工事や柵といった人工物にも囲まれていて、自然あふれる滝とは言いがたく。それでも切り取ってしまえば切り立った岩の印象が強くなり、未開の奥地に流れる滝のようにも見えてくる。
藻岩の滝は国道沿いに流れている滝なので、走行中でも山側を見ていれば眺めることは可能。以前は滝のそばに駐車スペースがあったようですが、いまはもう柵で囲まれてしまっていて進入不可です。
車を停めるならば、滝そばはトンネル出入口付近なので駐車は避けて、横滝トンネルと須築トンネルの間の中央付近が何かの工事をやっているので、その周辺の通行の妨げにならないところに停めるのがよさそうです。
なお、この日訪れた時間帯は夕闇の始まりごろ。写真で見るよりも実際はかなりの暗がり。周囲の風景までは目に入っていなかったけれど。
そして別日。冬が終わり春が始まりだした頃。
そして、藻岩岬の向こうに夕日が落ちそうな頃。
改めてみると、やっぱり断崖絶壁に囲まれた秘境感がある場所。ちなみに横滝トンネルと須築トンネルの間は住居は無し。人の住まわぬ秘境感。
そこに流れる、
藻岩の滝。春の始まりはまだ遠く、緑のかけらも見つからず。
夕日を浴びた岩肌と、夕日を浴びた枯れ草の間を、静かに落ちる水の流れ。
人工物は残念だけど、それにしてもごく一部。滝そのものは自然の中。
滝つぼに落ちる直前のくねっとしたゆがみ方が、やわらかに丸みを帯びていて。何とも優しい曲線美。人工物も切り取ってしまえば、それはもう自然あふれた景観感。
転がり落ちそうな岩肌と、崩れ落ちそうな岩肌と、頑丈そうな一枚岩。その間を押し出されて落ちる藻岩の滝。
いつまでも崩れることなく、その姿を保ってほしいと思わせる、そんな小滝。
【場所】
【せたな町 藻岩の滝にて】
【訪問日:2018.07.21/2019.04.06】