ダンボーとドライブする北海道。6月の終わりごろに行ってみたのは占冠村。占冠の中心部からトマム方面へと延びる夕張新得線、そこの途中に「不思議な泣く木」があるという。
占冠村の中心部は地図で見るかぎりとっても家のすくない小さな村。でもトマムもまた占冠村の一部。なので「占冠からトマム方面へ」という言葉を使うと何とも違和感。
トマム方面へと延びる夕張新得線は、占冠の街中を過ぎるともう家も見当たらない寂しい道路。地図で見ても、実際に走ってみても、人が住んでる気配が無く、自然あふれる道。
自然の中で見かけたせいか、目に付いたのが立体交差。
道路があって、その上を線路が走り、そのまた上に高速道路。もしかしたら普段から目にしているのかもしれないけれど、山の中のせいか「すごいな」と思ってしまった。町中なら分かるけれど、山の中、道にでもつくりようがあるはずなのに3重交差。
もっといえば、この道の下には鵡川の水が流れていて。
鵡川の川の流れ、その川の上に道路、道路の上に線路、線路の上に高速道路と四重交差。
さて、この立体交差からもう少しトマム方面へと行ったところに立っているのが「不思議な泣く木」。
その泣く木は大きな楡の木。トマム方面へ向かっていくと右側に小さな看板が見えてくる。
人の住む気配の無い山間の道。その中に堂々と立つ巨木。ここに立っていると、木そのものよりも周りの雰囲気も怖い。何かが潜んでいそうで、なんとも。
観光案内文を意訳・要約してみると。
夕張新得線の開通を目指した道路工事の妨げになってしまうため、幾度となくこの大木を切ろうとしたようです。しかしながら、のこぎりの刃をあてて切ろうとすると、うめくような亜泣き声が聞こえてくるため、どうしても切り倒すことが叶いませんでした。
この木には恋しい若者を慕う娘の魂が宿っていたのです。
さかのぼることひと昔、ふた昔よりももっと前のこと。日高アイヌと十勝アイヌは狩猟場のことで争いを続けていました。
争いが激しくなる中、日高アイヌの若者と、十勝アイヌの酋長の娘は許されぬ恋に落ちました。許されぬ愛が深まる中、2人はカムイの棲むというトマムに安息の地を求めて旅立とうとしましたが、若者は囚われの身となってしまいました。
若者は隙を見て逃げ出し、娘との待ち合わせの場所へと向かいました。目印は大きな楡の木です。
やっとの思いで待ち合わせのこの地にたどり着いた若者が目にしたものは、楡の木のそばで力尽きて倒れている娘の姿だったのです。
(参考:観光案内文より、一部改変)
と書いてはみたけれど、道路工事の邪魔になって切ろうとしたら切れなくて。「以来こんな言い伝えが。。。」とあるので、伝承自体はあとからの創作かと。結びつけるような言い伝えはあったかもしれませんが。
どちらかというと「泣く」木というよりは「泣いた」木になってそうだけど。
根元が痛んでいるように見えるのは、何度も切ろうとしたためか、それとも別の要因か。
ともかく「切るに切れなかった」ということはたぶん事実と思われて。
この木を避けるように道路がつくられているのも確か。奥の道をまっすぐ伸ばしたかったけれど、あえてカーブさせたようにも見えてくる。
写真を撮っているときにすごい轟音が聞こえてきたので、「飛ばしてる車が来た」と思って前後を振り向いても、車の影も見えず。
一瞬だけど、木が唸ったかと、何かの罰でも当たったかと思ってしまった。
実際は列車が近づいていたみたいで、木の向かい側にある線路のうえを、列車が駆け抜けていったという。
この道路、初めて来たと思っていたけれど、帰宅してから調べてみたら去年通った道。新得のそばロードから狩勝峠を通ったあと南富良野に抜けて。ナビに言われるがままに、夜の始まった時間に暗くて細くて砂利道の、霧深くて鹿があふれる峠道を通ったあとに出てきたのがこの道路。一人ぼっちで泣きそうになりながら運転したあとに、ほっとしながら走っていたのがこの道だった。まあ、泣く木とは関係ないか。
駐車場はありませんが、農道にありがちな退避場的なちいさな駐車スペースは2台分ほどあるので、そちらにきっちり車を停めたほうがいいかもです。
わたしはもう少し行った所の路肩に停めてしまいましたが。。。
また、一般道ですが車が飛ばし気味に通ることがあるので、ご注意を。
【場所】
【占冠村 不思議な泣く木】
【訪問日:2019.06.23】